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プレコンセプションケア

プレコンセプションケア

プレコンセプションケアとは

プレコンセプションケアとは、「pre」は「前に」、「conception」は「妊娠」、「care」は「健康管理」という意味ですので、簡単にいうと「妊娠前から始まる健康管理」という意味です。
WHO(世界保健機構)によると「女性、または妊娠を計画しているカップルが、妊娠前に医学的に評価・把握され、どのような生活行動をとることが望ましいか、さらには社会的環境面についも情報提供され、妊娠に向けた準備・ケアをすること」と概念付けられています。日本においても2019年12月に成育基本法が成立しました。医学的な立場から相談支援や健診などを通じて、将来の妊娠のための健康管理に関する情報提供を行っていきたいと考えています。
例えば若年女性のやせは骨粗鬆症や低出生体重児・早産児のリスクとの関連があるため、妊娠前から望ましい食生活の実践や適切な健康管理にむけて情報提供を行うことで、それらの合併症を未然に防ぐことができるかもしれません。
全ての人が健やかな妊娠、出産、育児を行えるように、医療の立場からサポートしていきたいと思っています。

ブライダルチェックとの違いは?

ブライダルチェックという言葉を聞いたことがあるかもしれません。
将来の妊娠を望む女性やカップルが妊娠や出産に影響のある病気があるかどうかチェックする健康診断のようなものです。すなわちブライダルチェックは妊娠できるかどうか調べるものではなく、妊娠しにくい要素がないかを検査するものです。プレコンセプションケアは、そのような健診なども含めたより大きな概念というイメージです。
下記の健診項目に加えて、食事やサプリメント、生活習慣、持病のことなど疑問に思うことに対して専門医より情報提供を行います。

また、不妊症検査とブライダルチェックについても検査内容が重複するものも多いので混同してしまうかもしれませんが、その大きな違いは目的と時間軸です。
ブライダルチェックは一般的に1回の健診で完了しますが、不妊検査は不妊症で悩むカップルに対して行うもので、不妊の原因検索などを行っていく過程も含まれるため通院をしながら複数回の通院が必要になります。もちろん高度な医療(体外受精などの生殖補助医療や婦人科疾患に対する手術)が必要と判断される場合は適切な病院にご紹介させて頂く場合もあります。また、一般的に不妊症は保険診療、ブライダルチェックは自費診療になります。
ご本人やカップルの状況に応じて、診察後に医師より説明をさせていただきます。

診療・検査項目と費用について

①既往歴や生活歴、月経周期や月経痛など月経関連症状に対する問診、血圧測定など
②子宮や卵巣の超音波検査(子宮筋腫や子宮内膜症などの確認)
③子宮頸がん健診
貧血や肝機能、腎機能、脂質異常(高脂血症)、糖尿病の血液検査、検尿
クラミジアと淋菌のPCR検査
感染症の血液検査(梅毒、B型肝炎、C型肝炎、HIV)
⑦甲状腺ホルモンの検査(TSH、FT4)

風疹抗体価の検査(抗体を持っていない場合はワクチン接種が可能です)
栄養素などの検査(フェリチン、ビタミンD、亜鉛)


検査項目費用
(税込)
基本セット(①〜④)8,000円
ブライダルチェック(①〜④+⑤+⑥+⑦+⑧)20,000円
オプション検査
⑤クラミジア・淋菌検査5,000円
⑥感染症の血液検査3,500円
⑦甲状腺ホルモンの検査4,000円
⑧風疹抗体の検査1,000円
⑨栄養素などの検査5,000円

妊娠前、妊娠中の具体的な医学的評価とその管理について

適正な体重を保つこと

適正体重(標準体重)とは、BMI(Body Mass Index)が 18.5 以上、25 未満となる体重を指します。
BMI=[体重(kg)]÷[身長(m)]÷[身長(m)]で計算されます。
肥満の基準は国によって異なりますが、日本肥満学会は以下のように、BMIが25以上の場合を肥満と定めています。       
BMI
肥満度判定
18.5未満
低体重(やせ)
18.5~25未満
普通体重
25~30未満
肥満(1度)
30~35未満
肥満(2度)
35~40未満
肥満(3度)
40以上
肥満(4度)

女性のやせは、月経異常や骨量の減少(骨粗鬆症)を引き起こし、肥満は、男性で精子の造精機能障害、女性では卵巣の機能抑制の原因となります。
また、妊娠期において、BMI18.5未満のやせでは、早産、低出生体重児のリスクが高くなり、BMI25以上の肥満では、帝王切開、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、産後の出血のリスクが高くなると報告されています。
妊娠してから急激に体重を増やしたりや減らしたりすることは困難であるため、妊娠前から適正体重を保つことが重要です。
妊娠中の体重増加については、妊娠前のBMIで推奨体重増加量が異なります。当院では妊娠初期に説明がありますが、おおまかに下記の通りです。

妊娠前の体格BMI体重増加量の
指導の目安
低体重(やせ)18.5未満+12kg〜15kg
普通体重18.5〜25未満+10kg〜13kg
肥満(1度)25〜30未満+7kg〜10lg
肥満(2度)30以上個別対応
(上限5kgまで)


喫煙とアルコール、カフェイン摂取

<喫煙>
妊娠中の喫煙は、胎児発育不全や流産、早産を引き起こし、前置胎盤や常位胎盤早期剥離といった母体、胎児の生命に関わるような産科合併症や、乳幼児突然死症候群のリスクも増加させます。また、胎児の口唇裂や先天性心疾患、手足欠損など先天奇形の増加も報告されています。これは非燃焼の加熱式タバコや電子タバコでも同様ですし、タバコの煙については、女性本人が喫煙していなくても周囲の人が喫煙することによる副流煙によって、同様な健康被害や子供への影響があることがわかっていますので、家族を含めて禁煙をすることが大切です。また、男性の喫煙は精子の状態を悪くすることで不妊の原因になることもわかっています。妊娠すると禁煙外来で処方される薬剤は使用できないため、妊娠を希望する方で禁煙できないカップルは、お近くの禁煙外来を訪ねてみてはいかがでしょうか?

<アルコール>
妊娠中のアルコールは、胎盤を通じて直接胎児に影響し、胎児アルコール症候群を引き起こします。具体的には胎児発育不全、特異顔貌、多動や学習障害、心奇形などの形態異常などが挙げられます。妊娠期間中のアルコールの安全量はないので、妊娠期間中は減酒でなく禁酒が必要です。

<カフェイン>
カフェインは様々な飲料(コーヒー、紅茶、日本茶、ココア、コーラ、エナジードリングなど)に含まれています。妊娠中のカフェイン摂取は、へその緒を通じて胎児に届きますので、過剰なカフェイン摂取の母児のリスクとしては、流産、胎児発育不全、低出生体重児などが報告されています。しかし、どのくらいの摂取がカフェインの過剰摂取かどうかの線引があるかどうか明確には定まっていないのが現状です。おおまかな摂取許容量としてWHOや欧米の機関の推奨としては、妊娠中は1日200mg〜300mg以下(コーヒーなら2〜3杯程度まで)に控えましょうと推奨があります。

適切な栄養摂取(鉄、葉酸、ビタミンD)

日本人女性の多くが、必要接種カロリーを満たしていないと言われています。偏った食生活を続けることで必要量の栄養が摂れておらず、妊婦やその子どもの予後に影響をあたえる微量栄養素の不足が問題となっています。特に、鉄、葉酸、ビタミン D は、妊娠・出産に関与する重要な栄養素ですが、日常の食事からだけでは十分に摂取するのが難しいことも多く、栄養補助食品(サプリメント)などによって摂取することもできます。

<鉄>
鉄は、全身に酸素を運ぶ赤血球の材料であり、不足によって貧血を引き起こします。特に、妊娠中は胎児胎盤への供給もあるので貧血になりやすく、妊娠前から貧血を認める場合は更なる注意が必要です。女性は毎月月経(生理)があるため、個人差がありますが、実は貧血による鉄不足という方も多くいらっしゃいます。最近貧血はうつ症状との関連があるといわれており、妊娠や産後は気分が落ち込んだり悲しくなったりすることも多いですので、一度検査を受けてチェックしてみてはいかがでしょうか?

<葉酸>
葉酸はビタミンB群の一種で、胎児の成長に必要な栄養素の一つです。女性の葉酸の不足と胎児の神経管閉鎖障害(無脳症や二分脊椎)の発症との関係性が明らかにされており、妊娠の 1 か月以上前から妊娠 3 か月までの間、食事以外に400ug/日の葉酸摂取が推奨されています。

<ビタミンD>
ビタミンDは食事や日光浴により蓄えられるビタミンで、骨形成に関与します。最近では生活習慣の変化からビタミンD低値の女性が増えています。ビタミンDが不足していると、不妊症や妊娠中であれば早産や妊娠高血圧症候群など、生まれてきた児に対しては新生児くる病(骨が弱い病気)のリスクが増えるという報告があります。


当院で扱う栄養補助食品(サプリメント)はバイエル薬品株式会社のエレビット(elevit)です。
4,400円/30日分(税込)になります。詳しくは受付までお問い合わせください。

感染症の予防とワクチン接種の推奨

妊娠前及び妊娠期の感染症は、女性・母体を通して児の健康に影響を与えます。例えば、HIVや梅毒は胎盤を通して胎児に感染し、また、妊娠初期に母体が風疹に感染すると、胎児に白内障や先天性心疾患や難聴などの先天性風疹症候群と呼ばれる病気を引き起こします。したがって、妊娠前から、性感染症の予防や風疹のワクチン接種をすることで、感染症を未然に防ぐことが重要です。特に、風疹の予防接種については、女性だけでなくそのパートナーである男性にも接種が勧められています。

母体年齢と妊孕性の関係

すべての卵子は出生時から等しくあるとされていて、女性が生まれた時の卵子の数は約200 万個と言われていますが、出生後に増えることはありません。卵子の数は、思春期には約 20~30 万個に減少し、閉経時にはゼロに近づきます。年齢が進むとともに卵子の数は減少していくため妊娠率は低下し、流産率は上昇します。例えば40歳の時に排卵した卵子は、20歳の時に排卵した卵子より20年分老化しているとも考えられます。つまり加齢に伴う卵子の老化の減少はどうしても避けることができません。また、母親の年齢があがると子どものダウン症候群などの染色体異常の頻度もあがることもわかっています。他にも高齢妊娠は、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病のリスクが高く、子どもが低出生体重児で出生する可能性が高まると言われています。

メンタルヘルス

現代はストレス社会であり、メンタルヘルスの問題を抱える方も多くいらっしゃいます。妊娠・出産は身体や環境の急な変化を伴いますので、心のバランスが崩れて生活に支障をきたすこともあります。妊娠前から心配や不安、落ち込みや不眠などで日常生活に支障をきたすようであれば心療内科や精神科を受診することも重要です。妊娠中に薬を服用することについては医師によっても様々な考えがありますが、当院では一番大切なのはお母さんの心の安定なので、そのためには母体にとって必要かつ胎児にとってより安全な薬剤を選ぶことが重要です。心療内科の主治医の先生の意見を伺いながらベストは何か一緒に考えていきたいと思います。

高血圧と糖尿病

30代、40代と年齢が高くなるに連れ、高血圧や糖尿病の罹患頻度が増えます。高血圧の女性が妊娠した場合、妊娠高血圧症候群や帝王切開、早産、低出生体重児などのリスクが高くなると言われており、また糖尿病によって高血糖の状態のまま妊娠すると、先天異常や流産のリスクが高くなると言われています。いずれも妊娠前から生活習慣を見直したり、妊娠中にも使用可能な薬剤による血圧コントロールや血糖コントロールをしておくことが重要です。特に糖尿病は、妊娠前から血糖がコントロールされている場合は、妊娠中の様々リスクが低減することが明らかにされているため、妊娠前に見逃さないようにすることが大切です。

甲状腺疾患

甲状腺ホルモンは妊娠中の胎児の発育に欠かせないホルモンです。甲状腺機能低下症は、不妊や流産のみならず、妊娠高血圧症候群、常位胎盤早期剥離や貧血、帝王切開のリスクが高くなるとされ、甲状腺機能亢進症は、流産や早産のみならず、母体合併症として常位胎盤早期剥離や心不全、甲状腺クリーゼ、胎児への影響として低出生体重、胎児発育不全、甲状腺腫、新生児甲状腺機能亢進症などのリスクが高くなるとされています。妊娠前に発見し適切に治療し、妊娠中も治療を継続することは、これらのリスクが減少できるため、プレコンセプションケアとしても重要な疾患になります。
最近の研究では、甲状腺自己抗体(抗TPO抗体や抗Tg抗体)が陽性の場合は、甲状腺ホルモン(FT4)が正常でも、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の値を2.5 mIU/L以下にコントロールした方が流産のリスクが減少することがわかっておりますので、そのような場合は甲状腺内科の専門医にご紹介して治療を受けていただいております。

妊娠初期の使用によって胎児への先天異常のリスクが報告されている主な薬剤

カルバマゼピン
チアマゾール
バルプロ酸
フェニトイン
メソトレキセート
リチウム
高用量のビタミンA
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